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自己破産における免責とは?免責が受けられないケースとは?

2020年04月08日 | コラム, 借金・債務整理

破産手続の目的

自己破産の手続には、大きく分けて二つの目的があります。

一つは、①破産者の財産をお金に換え、これを債権者に公平に分配すること

そしてもう一つは、その見返りとして、②残った債務(借金)の返済義務を免除してもらうこと(これを「免責」といいます)

です。

 

もっとも、自己破産は借金の返済ができなくなった方にとって最後の手段であるとともに、個人破産の多くのケースではお金に換えられるような資産がないことから、②の目的が主眼になることが大半であると思います。

しかしながら、自己破産は、すべてのケースで無条件に「免責」を認めてくれる制度ではありません。

まれなケースではありますが、実際に免責が認められなかったという事例も存在します。

自己破産を検討している方にとって最大の関心事は、ご自身のケースで債務の免責が認められるかどうかだと思いますので、自己破産における借金免除の仕組みである「免責」について簡単に解説します。

免責とは?

免責の意味

すでに述べたように、自己破産の目的の一つは、債務者が抱えている債務を債務者の財産を処分することによって清算することにあります。そのため、自己破産を裁判所に申し立て、破産手続が開始されると、価値のある財産は破産管財人によって現金化され、公平に債権者への配当に充てられます。

しかしながら、当然のことではありますが、自己破産は債務を完済できないと考えた債務者が採る手続ですので、配当を行った後も一定の債務は残ってしまいます。

その残った債務の返済義務を免除することが「免責」になります。

個人の自己破産の場合には、自己破産をしたとしてもその後も経済活動は続けていく必要があり、生活の再建には免責が欠かせません。

その意味で、免責は、自己破産後に残った債務の返済を免除することで、債務者に対して再起の機会を与えるものということができます。

免責を得るまでの流れ

免責の手続は

  1. 免責の申立て
  2. 免責審尋
  3. 免責許可決定(または不許可決定)とその確定

という流れで進められていきます。

1.免責手続の申立て

法律上厳密には、自己破産の申立手続と免責の申立手続は別ですが、実務上は、自己破産の申立ての際に、同時に免責許可も申し立てる形になっています。

2.免責審尋

免責審尋とは、裁判所が、破産者(債務者)に免責を与えるべきかどうか判断するため、必要な調査や意見聴取を行うための手続になります。裁判所から、破産者に対して質問がなされることもありますので、破産者も必ずこの手続に出頭しなければなりません。

免責審尋では、債権者も破産者の免責について意見を述べることができます。事情によっては、免責に反対する債権者もいますが、裁判所が判断する上での一つの意見ですので、債権者が反対したら免責が受けられないというわけではありません

3.免責許可決定(または不許可決定)とその確定

免責審尋からおおむね1週間前後で、裁判所は、破産管財人の調査結果や債権者の意見などを踏まえ、免責を許可するかどうかの決定を出します。

免責許可決定は、公告期間(2週間)内に債権者から異議が出なければ確定となります。

免責されると借金はどうなる?

免責の効果

免責許可決定が確定すると、残った債務の返済義務がなくなります

また、免責を得ることで「復権」の効果が生じ、破産によって発生していたすべての制限が解除されます。実務上意味が大きいのは、職業の資格制限が解除されることです。

免責されない債務

免責の効果は、基本的にすべての債務に及びます。

しかしながら、一定の債務(債権者から見た場合は債権)については、公平性などの理由から、免責決定を得たとしても債務者の支払義務が免除されないこととされています(この債権を「非免責債権」といいます)。

具体的には、以下の債権で、破産法第253条1項に定められています。

1.税金、社会保険料等

例えば、滞納している所得税、住民税、消費税、自動車税、固定資産税、国民健康保険料、国民年金保険料などがこれにあたります。

2.悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権

「悪意」(積極的に他人の権利を侵害するような意図と解されています)で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権に限られますので、典型的な不法行為に基づく損害賠償請求権はこれにあたりません。

例えば、不貞行為の慰謝料や交通事故による損害賠償の多くはこれに該当せず、原則どおり免責されることになります。

3.故意や重過失により加えた生命・身体損害に基づく損害賠償請求権

例えば、暴力を振るって他人に怪我を負わせた場合の損害賠償債務、飲酒運転などの重大な過失によって交通事故を起こして他人に怪我を負わせた場合の損害賠償債務などがこれにあたります。

4.夫婦間の協力・扶助の義務、婚姻費用分担の義務、子の監護に関する義務、扶養の義務、またはこれらの義務に類する義務であって契約に基づくもの

代表的なものとしては、未払いの婚姻費用や養育費がこれにあたります。

5.従業員への給与や預かり金

破産者が個人事業を営んでいた場合の従業員に対する未払給与や積立金などがこれにあたります。

6.意図的に債権者一覧表に記載しなかった債権者に対する債権

破産申立にあたり、破産者が意図的に債権者を除外した場合には、その債権者に対する債務は免責されません。

もっとも、債権者が破産者について破産手続が開始されたことを知っていた場合には、その債権者が破産手続に関与する機会は確保されていたといえますので、原則どおり免責されることになります。

7.罰金等

犯罪行為を行った場合の刑罰である罰金や科料などは免責されません。

免責されないのはどういう場合?

上記の非免責債権は、免責が許可されたとしても例外的に支払義務が残る債権のことでした。

では、そもそも免責が許可されないケースというのはどういう場合でしょうか。

個人の自己破産の場合、免責されることが本来は原則のはずです。なぜならば、残った債務の返済義務を免除してあげなければ破産者の生活の再建が図れず、自己破産という道を多重債務者に与えた意味がなくなってしまうからです。

しかしながら、事案によっては、免責を認めてしまうと、債権者との関係で極めて不公平となってしまうケースも存在します。

そこで、破産法は、いくつかの具体的な事情に該当する場合には、免責を与えないことを定めています(この事情のことを「免責不許可事由」といいます)。

免責不許可事由

免責不許可事由は破産法第252条1項に列挙されていますが、おおむね次のような類型に整理することができます。

  1. 債権者を害する行為の類型
  2. 破産者の義務に違反する行為の類型
  3. 免責制度に関わる政策的類型

以下、個別に説明していきますが、すべての類型に共通するのは、不誠実すぎる破産者は免責されないということです。

1.債権者を害する行為の類型

破産者は、債務を約束どおりに返済できなくなった段階で債権者に迷惑を掛けていると言えるわけですが、その迷惑の度合いがあまりにも悪質すぎる場合には、免責は認められなくなります。具体的には、次のような場合です。

  • 債権者に配当すべき財産を不当に減少させる行為(隠匿、損壊、不利益処分など)があった場合
  • 著しく不利益な条件での債務負担行為(ヤミ金からの高利での借入れなど)や換金行為(クレジットカードで購入した商品を安く売ってしまうなど)があった場合
  • 特定の債権者にだけ、義務もないのに、担保を設定したり返済をしたりする行為(非義務的偏頗弁済)があった場合
  • 浪費、ギャンブル、射幸行為(投資など)によって多額の債務を抱えた場合
  • すでに債務の返済ができない状態にあるにもかかわらず、債権者を騙して借入れ等の債務負担をした場合

2.破産者の義務に違反する行為の類型

破産者には、破産手続に誠実に協力する義務がありますので、これに違反した場合には免責が認められなくなります。具体的には、次のような場合です。

  • 裁判所に虚偽の申告をした場合(帳簿等の隠滅・偽造・変造や虚偽の債権者一覧表の提出など)
  • 裁判所や破産管財人が行う調査において、説明を拒み、または虚偽の説明をした場合
  • 不正の手段により、破産管財人の職務を妨害した場合

3.免責制度に関わる政策的類型

免責は、債権者の権利を犠牲にして成り立つものです。

そのため、真摯にやり直す意思があると思えない債権者にまで免責を与えることは社会的な理解も得られませんので、政策的に免責が許可されないことになっています。

具体的には、次のような場合です。

  • 過去に免責許可決定を受けたことがあり、その確定日から7年が経過していない場合
  • 過去に個人再生の給与所得者等再生で再生計画認可決定を受けたことがあり、その決定日から7年が経過していない場合
  • 過去に個人再生のハードシップ免責の許可を受けたことがあり、その再生計画認可決定日から7年が経過していない場合

免責不許可事由に該当しても免責される場合

以上、免責不許可事由を列挙してきましたが、自己破産を考えている方が一番心当たりがあるのが

  • 浪費、ギャンブル、射幸行為(投資など)によって多額の債務を抱えた場合

かもしれません。

ただ、このように、免責不許可事由に該当するような事情がある場合でも、直ちに「免責が得られない」、「自己破産する意味がない」とあきらめる必要はありません。

破産法は、免責不許可事由がある場合であっても、裁判所が諸般の事情を考慮して、免責を与えることが相当であると判断した場合には、裁判所の裁量によって免責が許可される場合があると定めています。

これを「裁量免責」といいますが、実務上は、破産者の反省の状況や現在の生活態度などを考慮しながら、免責不許可事由のある事案の大半において裁量免責を認めています。

まとめ

自己破産を検討している方にとって、免責が認められるかどうかは最大の関心事と言っていいと思います。

その中で、浪費やギャンブルを原因に借金を重ねてしまった方は、「自分はどうせ免責されない」とお考えかもしれません。

しかしながら、免責不許可事由がある場合でも、しっかりと破産手続に協力し、生活再建の意欲を示せば、よほどの事情がない限り裁量免責が認められるのが通例です。

免責が得られないとあきらめて、債務の返済を放置したり、さらに借金を重ねたりするとかえって解決を遠ざけることになりかねません。

多額の借金を抱えるに至った事情は人それぞれです。当事務所ではその事情を丁寧にお尋ねしますし、その過程を非難することなどありません。借金の返済が苦しいと感じたときには、できるだけ早めに当事務所までご相談ください。