お子さんを抱えながら離婚を考えている女性にとって、最も不安なことの一つが、離婚後、お子さんを経済的に養っていけるかどうかということではないでしょうか。
夫との生活は限界だし、子どもももちろん引き取りたいけれど、日々の生活費や学費を賄いきれるか不安でなかなか離婚に踏み出せないという方もいらっしゃると思います。
そこで、今日は、養育費について説明したいと思います。
そもそも養育費とは?
養育費とは、離婚後、未成年の子どもが大人になるまでに必要な費用のことです。
子どものいる夫婦が離婚した場合、子どもと離れて暮らす方が、子どもと一緒に暮らす方(親権者)に対し、定期的に一定の金額を支払うことになります。これは、たとえ離婚したとしても、子どもの親であることに変わりはなく、子どもが大人になるまで養育する義務を負っているためです。
養育費の算定方法
養育費の金額は、離婚する際に、夫婦双方で協議して決定することになります。
一般的には、家庭裁判所が公開している「養育費算定表」を基準に決めることが多いです。
養育費算定表においては、例えば妻が親権者となった場合、夫(義務者)の収入と妻(権利者)の収入、子どもの人数、子どもの年齢(0歳~14歳と15歳以上で区分)を考慮要素にして、金額を決めていきます。
例えば、夫の年収(給与)が650万円、妻の年収(給与)が150万円、子どもが二人(15歳以上が一人、14歳以下が一人)というケースを想定してみますと、養育費は月額10~12万円という枠に収まります。
この場合、10~12万円の枠内で具体的金額を決定し、さらに、第一子と第二子の配分も決めた上で合意することが通例です。
なお、養育費算定表に関しては、令和元年12月に新しい算定表が公開されました(上記ケースも新算定表に当てはめたものです)。従前の養育費算定表はすでに公開から15年以上が経過しておりましたので、より一層現在の社会実態を反映したものに改良されたものです。新しい養育費算定表は裁判所のホームページでもご覧いただくことができますので、ぜひ一度ご確認下さい。
新算定表ですが、従前の算定表に基づいて算出した場合と比べ概ね増額傾向にあるようで、一般的な収入水準のご家庭ですと、月額1万円から2万円程度の増額になるのではないかと思います。
こんな場合はどうする?
片方が無職の場合
例えば、夫婦のどちらか一方が十分稼働能力があるにもかかわらず無職だった場合、その人の年収をゼロとして養育費算定表を参照しなければならないのでしょうか?
このように明らかに稼働能力があるにもかかわらずそれを持て余しているような場合には、稼働すれば少なくともパート収入くらいは得られるだろうとの想定のもと、年収約100万円程度と仮定して養育費算定表を参照するケースがあります。
ただ、例えば、子どもがまだ就学前で母親が休職して監護を行っているというようなケースでは、さすがに稼働することは困難ですので、パート収入を仮定して算出することは無理があるでしょう。
実態に合わない場合
養育費算定表は、標準的な養育費を簡単に算定することを目的に作成されたものですので、これによって算出された金額が実態に見合わないというケースも出てきます。
このような場合には、その家庭の個別事情を考慮の上、算定表とは異なる金額を決めていくということは十分可能です。
ただ、個別事情とはいっても、通常想定される事情は養育費算定表作成の際にすでに盛り込まれていますので、算定表とは異なる金額で合意するには、算定表によるのでは極めて不公平になるような特別な事情が必要と考えられます。
養育費の終期は?
養育費の終期についても特に決まりはなく、当事者の合意で決めていくことになります。
基本は、成人に達する月(20歳の誕生日が来る月)ですが、大学卒業に達する年齢(22歳の3月)にすることも多いです。終期をどうするかは、ある程度の年齢に達した子どもであればその進学意向を考慮しながら、そうでなければ夫婦の学歴や意向なども考慮しながら決めていくのが通例です。
なお、2022年4月1日施行の改正民法により、成人年齢は18歳に引き下げられることになりますが、このことが養育費の終期に与える影響はほとんどないと思われます。上記のとおり、養育費の終期は単純に成人に達した年齢とされるわけではなく、修学をいつ終えるかという観点から決められるもので、多くの未成年者が大学に進学する傾向は今後も変化はないと考えられるためです。
離婚後の事情変更
養育費はあくまでも離婚時の事情によって決められたものです。
そのため、離婚後、その事情に変化があった場合は養育費の増額や減額を求めることができます。
養育費は、双方の収入をベースに決められていますので、義務者の収入が激減したというような場合がまずこれに当たるでしょう。
また、子どもの親権者となった妻が、離婚から数年後に再婚し、再婚相手と子どもの間で養子縁組が行われたような場合も同様です。このようなケースでは、再婚相手が子どもの一次的な扶養義務者となりますので、離婚した前夫には養育費の支払義務がなくなります。
まとめ
養育費は、お子さんが健全に生活・成長していくために不可欠な費用ですので、離婚の際には必ず合意すべきです。
離婚を優先させるため、あるいは、どうせ支払われないだろうという考えなどから、養育費を定めず離婚してしまうケースも珍しくありませんが、お子さんのための費用を親権者がその一方的な都合で放棄してしまうのは決して望ましくありません。
他方で、養育費についてなかなか折り合うことができず、そのために離婚が合意できないというケースもあるでしょう。
離婚をお考えの場合、あるいは、すでに離婚に向けての話し合いを進めているもののなかなか親展がない場合など、ぜひ一度お気軽に当事務所までご相談ください。