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離婚と別居の関係

2020年06月17日 | コラム, 離婚・男女問題

離婚相談の際、「離婚するには別居した方がいいの?」「どれくらいの期間別居していれば離婚できる?」など、別居に関するご質問を受けることがよくあります。

今回は、離婚と別居の関係について解説します。

1.離婚の種類ごとの別居の位置づけ

協議離婚・調停離婚の場合

夫婦がお互いに離婚の意思を持っていれば、必要事項を記入した離婚届を役所に提出することで、すぐに離婚が成立します(協議離婚)。

しかし、夫婦のどちらか一方が離婚に同意せず、協議離婚が成立しない場合には、家庭裁判所での離婚調停を行わなければなりません。離婚調停とは、裁判所で構成される調停委員会が夫婦間に入り、離婚に向けた協議をする方法です。裁判所が舞台になること、調停委員による仲介があることの違いはありますが、最終的に話し合いで結論を出す点は協議離婚と変わりません。

協議離婚・調停離婚ともに夫婦双方の話し合いですので、離婚の意思や条件さえ合致すれば、別居は必要不可欠ではありません。同居しながら離婚協議を重ねることも可能ですし、離婚調停を行うことももちろん可能です。

ただし、私の経験上、離婚の話し合いがスムーズに進むのは圧倒的に別居をしている夫婦のケースです。どうしても同居を続けていると、毎日自宅で顔を合わせるため、①思ったことをストレートに伝えづらい、②調停では主張したいことを主張できるが家に帰ると気持ちがクールダウンしてしまう、③相手方に本気度が伝わりづらく、関係修復の可能性を期待させてしまうなどの弊害があるように思います。

したがって、協議離婚や調停離婚には別居は不可欠ではないものの、どうしても同居せざるを得ないという事情がない限り、別居をしていることが理想であるといえます。

裁判離婚の場合

離婚調停においても夫婦双方の溝が埋まらず、調停が成立しない場合がありますが、この場合には家庭裁判所に離婚裁判を提起しなければなりません。離婚裁判においては、これまでの夫婦双方の話し合いと異なり、裁判所に離婚判決を求めて主張や証拠の提出を行っていくことになります。

そして、裁判所が離婚判決を言い渡すべきかどうかについては、民法第770条において以下の5つの離婚事由が定められています(法定離婚事由)。裁判所から離婚判決の言い渡しを受けるためにはこれらの事由のいずれかを満たさなければなりません

【民法第770条で定められている法定離婚時由】
第七百七十条 夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
一 配偶者に不貞な行為があったとき。
二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。

ご覧のとおり、法定離婚事由には「別居」に関する記載はありません。したがって、別居期間がどれだけ長くなったとしても、それだけで直ちに離婚事由が満たされるわけではないのです。

法定離婚事由において別居期間が問題となるのは、5号の場合です。すなわち、5号は「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」として、1~4号の離婚事由がなかったとしても、その他に婚姻継続が困難な重大な事由があるときには、離婚を認めることとしています。この重大な事由の判断要素として、別居期間が考慮されることになります。

2.離婚に必要な別居期間

どの程度の別居期間があれば「その他婚姻を継続し難い重大な事由」(民法第770条5号)として認められるかですが、これについては明確な基準はありません。

過去の裁判例の傾向から、概ね別居期間が5年程度あれば「その他婚姻を継続し難い重大な事由」に該当しやすいと言われています。

しかしながら、上記のとおり、元々別居期間そのものが法定離婚事由なのではなく、あくまでも別居期間は法定離婚事由としての「その他婚姻を継続し難い重大な事由」を判断する一要素に過ぎません。

仮に別居期間が5年より短かったとしても、婚姻期間が4年でそのほとんどの期間別居していたような場合には夫婦生活が完全に破綻しているとして、「その他婚姻を継続し難い重大な事由」が認められやすでしょう。また、別居の事実以外にも、夫婦関係の破綻をうかがわせる事情がある場合には、5年より短い期間でも「その他婚姻を継続し難い重大な事由」が認められることは大いにあり得ます。

他方で、別居期間が5年を経過していたとしても、夫婦での連絡を頻繁に取っていたり、時折一緒に出掛けたりしていたような場合には、婚姻関係が破綻しているとは言い難く、「その他婚姻を継続し難い重大な事由」が認められないこともあり得ます。

このように、別居期間と婚姻関係の破綻の関係性は、夫婦ごとに個別具体的に検討しなければなりません。

3.別居期間が長くても離婚できない場合

別居が「悪意の遺棄」に該当する場合

別居することに合理的な理由があり、夫婦間に別居の合意ができていればいいのですが、たとえば、夫婦の一方が理由もないまま勝手に家を出ていってしまった場合別居期間中、収入がありながら配偶者に生活費(法的には「婚姻費用」といいます。)を全く支払わない場合などは、別居期間がどれだけ長くても自ら離婚を請求することはできません。

夫婦には同居義務や扶助義務があることから、これらの配偶者を見捨てる行為は「悪意の遺棄」と呼ばれ、上記民法第770条2号の法定離婚事由に該当するためです。

「離婚事由に当たれば離婚できるのでは?」とお考えになるかもしれませんが、この場合に家を出て行った側は有責配偶者となります。有責配偶者とは、民法第770条に定められる行為をしたことで、法定離婚事由を作った配偶者のことをいいます。

詳しくは次の項で述べますが、有責配偶者になってしまうと、原則として自らの離婚請求は認められません。それどころか、かえって配偶者から慰謝料を請求される場合もありますので、注意が必要です。

自身が有責配偶者に該当する場合

別居中の夫婦のうち、有責配偶者の側が離婚請求をしてもこれは原則認められません。

有責配偶者とは、民法第770条に定められる行為をして自ら法定離婚事由を作った配偶者のことをいいますので、上記「悪意の遺棄」(同条2号)を行った配偶者のほか、「不貞行為」(同条1号)を行った配偶者が主にこれに当たります。

有責配偶者からの離婚請求が認められないのは、これを認めてしまうと、自ら積極的に離婚理由を作って(離婚することを目的として不貞行為を行うなど)離婚するという不正義がまかり通ってしまうためです。

ただし、最高裁判所の判例から、次の3つの条件が満たされている場合には、例外的に有責配偶者からの離婚請求であっても認められることがあります

(1)別居期間が相当の長期間に及ぶ

明確な基準こそありませんが、夫婦の年齢や同居期間との対比で、相当の長期間にわたることが必要です。上記のとおり、通常の離婚請求の場合でも一般的に5年程度の別居期間が必要とされていますから、これよりもさらに長い期間が必要になります。参考までに、初めて有責配偶者からの離婚請求が認められた最高裁判例のケースは、同居12年、別居期間約36年というものでした。

(2)夫婦間に未成熟の子が存在しない

経済的に自立できない未成年の子どもがいる場合は、両親による養育が必要なため、有責配偶者からの離婚請求は原則どおり認められません。

(3)社会正義に反するような特段の事情がない

相手方配偶者が離婚により精神的・社会的・経済的に極めて苛酷な状態に置かれる場合には、有責配偶者からの離婚請求は原則どおり認められません。

4.まとめ

最後に、別居ないし別居期間が離婚においてどのような意味を持つかのまとめです。

まず、協議離婚や調停離婚といった話し合いでの離婚を求めるケースでは、民法に定められた離婚事由は必要ではなく、別居も不可欠ではありません。ただ、話し合いを円滑に進めるという意味では別居していた方が望ましいと言えます。

協議離婚や調停離婚が成立しない場合には裁判離婚を求めることになりますが、この場合は民法第770条1号から5号に定められた法定離婚事由のいずれかを満たす必要があります。そして、5号の「その他婚姻を継続し難い重大な事由」を離婚事由とする場合には、その判断要素として別居期間が考慮されます。必要な別居期間は概ね5年程度と言われることが多いですが、その他の事情との兼ね合いによっても変わってきますので、夫婦の状況に即して検討する必要があります。

別居をした方がいいか、現在の別居期間で離婚が認められるかなどについては、個別事情によって見通しが変わってきますので、なかなかご自身では判断がつかない部分が多いと思います。特に、離婚や男女問題に関しては、他の事案以上に客観的にご自身の立場を評価することには困難を伴います。

当事務所では初回法律相談を無料にて承っておりますので、ぜひ一度お気軽にお問い合わせください。