[modifieddate]

管理職と残業代

2020年07月21日 | コラム, 労働問題

はじめに

社内人事で昇進すると同時に「今後は管理職になるから残業は出ない」と会社から説明され、残業代を支払ってもらっていないという方は多いと思います。

しかしながら、すべての管理職の方が残業代の支払いを受けられないわけではなく、管理職の中で残業代の支払いが不要とされている方(「管理監督者」といいます。)は実際にはほんの一握りです。

今回は、本来「管理監督者」でないにもかかわらず残業代が支給されていないいわゆる「名ばかり管理職」の問題について解説します。

「管理職」≠「管理監督者」

会社側が残業代の支払いをしない理由には様々なものがありますが、そのひとつとして「管理職だから残業代を支払う義務がない」という主張があります。

確かに、労働者が労働基準法上の「管理監督者」に該当する場合には、労働基準法上、残業代(割増賃金)を払わなくて良いとされています(同法41条2号)。

しかしながら、「管理職」=「管理監督者」ではありません。この二つは同じようなものと誤解されがちですが、実は全く異なります。
「課長だから管理職」とか「店長だから管理職」というのは会社独自の基準であって(「管理職」は法律上の概念ではありません)、これらの役職が労働基準法上の管理監督者に該当しないことは十分にあり得えます。

「管理監督者」とは?

では、残業代をもらう権利がない「管理監督者」とは具体的にどのような地位にある者を言うのでしょうか。

労働基準法においては、「事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者」という抽象的な定め方しかされていません。この抽象的な文言について、実際の裁判例においては、概ね次の3要素を満たすかどうかを考慮して管理監督者にあたるか否かを判断しています。

  1. 経営者と一体的立場にあるといえるほど重要な権限と責任のある職務に従事しているか(労働条件の決定その他労務管理上の指揮権限を有するか、経営方針の決定や経営を左右するような仕事に関わっていたかなど)
  2. 出退勤について厳格な規制を受けず、自己の勤務時間について自由裁量権を有するか
  3. 基本給や各種手当において、経営者と一体的立場にある者としてふさわしい待遇がなされているか(他の従業員と比べて、相当の金額差のある高給が支給されているか)

「管理監督者」に該当するかどうかはこれらの3要素を総合的に考慮して判断することになりますが、これらの要素を満たさない管理職の方は、法律上残業代が支給されなければならないことになります。

たとえ就業規則などで「管理職には残業代を支給しない」と明記されていたとしても、労働基準法に定められた基準に達しない労働条件は無効となりますので、残業代を請求することが可能です。

「名ばかり管理職」とは?

「名ばかり管理職」とは、「管理監督者」に該当しないにもかかわらず、会社から「あなたは管理職だから」と言われて、本来支給されるはずの残業代が未払いになっている管理職の方のことを指します。

では、実際にはどのような役職の方が、「名ばかり管理職」に該当することが多いのでしょうか。上記のとおり、「管理監督者」に該当するかどうかは、役職の名称ではなく、実際の業務実態や権限の内容によって個別具体的に判断されるものですが、一般論として、どのような役職の方が「名ばかり管理職」に当てはまりやすいか参考までにご紹介します(※すべての方に当てはまるわけではありませんので、判断に迷う場合は必ず専門家にご相談ください)。

(1) 課長や係長などの場合

課長や係長の方の多くは「管理監督者」に該当せず、「名ばかり管理職」に当たる場合が多いでしょう。すなわち、課長や係長の方のほとんどは残業代を請求することが可能ということになります。

これは、一般的には、課長や係長の方で、上記3要素を満たしている方は少ないと言えるためです。課長や係長の方は、上司の指示に基づいて働くことが通常で、全社的な経営判断に参画することは稀でしょうし、自分の好きな時間に出退勤できる方というのも少ないでしょう。これらからすれば、課長や係長の方が「管理監督者」に当てはまることはほとんど無いと言っていいかと思います。

(2) 部長の場合

部長の場合には微妙で、「管理監督者」に該当するか「名ばかり管理職」に該当するかはそれぞれの業務実態や権限の内容によって変わってくると言わざるを得ません。つまり、残業代を請求できる方もいれば、できない方もいるということになります。

上記3要素を満たすかどうかは会社ごとに違うでしょうから、部長の方は、ご自身の業務実態や権限の内容が、各要素を満たしているのかどうかをチェックして、ご自身が「名ばかり管理職」なのか「管理監督者」なのかご判断頂ければと思います。

(3) 店長の場合

店長の方の場合も、「管理監督者」と「名ばかり管理職」のどちらにあてはまるかは、店舗の規模等によって変わってきます

例えば、多数の店舗を展開するチェーン店の店長の場合、本社を運営する方や、一定地域の店舗を統括をする方など、上司の指示に従って働くことがほとんどでしょうし、その他勤務時間の裁量や待遇の面においても上記3要素を満たさないケースが多いと思います。すなわち、チェーン店の店長は、「名ばかり管理職」であることが多く、残業代を請求できるケースが大半であると言えるでしょう。

他方で、数店舗しか店舗を展開していないといった小規模な会社の店長の場合は、どちらもあり得ると思います。このようなお店の場合、店長が大きな権限を持っていて、「管理監督者」の3要素を満たしているということが十分にあり得るためです。

まとめ

今回は、「名ばかり管理職」の問題について簡単に解説しました。

すでに触れましたとおり、「名ばかり管理職」に該当するかどうかは単なる役職名からではなく、具体的な業務実態や与えられている権限などから事案ごとに判断しなければなりません。この判断はご自身ではなかなか難しいことも多いと思いますので、お悩みの方は一度専門の弁護士までご相談ください。

当事務所にご相談いただければ、弁護士がしっかりとお話しを伺い、「名ばかり管理職」に該当するかどうか判断の上、最適な解決方法をご提案させていただきます。正式にご依頼いただいた後は、残業代の計算はもちろんのこと、書面の作成や会社との交渉代理等、解決までの道筋すべてについて手助けさせていただきます。

当事務所は、費用を気にせずご相談いただけるよう初回相談60分まで無料とさせていただいておりますので、是非お気軽にお問い合わせください。