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婚姻中にできた借金は離婚時にどう処理するの?

2021年02月10日 | コラム, 離婚・男女問題

離婚協議において度々問題になるのが、婚姻期間中に夫婦の片方が負担した借金をどう処理するのかという問題です。

借金は、住宅ローンをはじめとして夫婦が同意の上で契約したものもあれば、相手方に秘密のまま負った個人的な借金もあるでしょう。

特に後者の場合には、相手方からすると突如降って湧いたような話であり、離婚協議における障壁となる場合があります。

今回は、離婚時の夫婦の借金の取り扱いについて解説します。

1.借金は契約の名義人が返済する

まず、大原則ですが、借金を抱える夫婦が離婚する場合、その返済義務は契約の当事者(名義人)に生じます。債権者との関係において、名義人でない夫婦の一方が、借金の返済義務を一部でも負うようなことはありません。

また、分与すべき財産が借金しかなかった場合(プラスの資産がなかった場合)、借金の名義人である夫婦の一方がもう一方に財産分与を請求して、実質的に借金を一部肩代わりさせることも基本的には認められません。これは、財産分与の制度趣旨は夫婦が協力して作り上げた積極財産を相互に分け合うというものであり、消極財産である借金を分与の対象とすることは本来予定されていないためです。

もっとも、離婚する際に、積極財産と消極財産が両方ある場合には、借金(消極財産)の存在を考慮した上で財産分与の金額が決められることがあります。これは、その借金が夫婦の「共有財産」に当たるか、「特有財産」に当たるかで異なります。

(1) 共有財産

共有財産とは、婚姻中に夫婦が協力して築いた財産のことをいいます。名義が夫婦のどちらにあるかは関係ありません。

婚姻期間中に形成された以下のようなものは基本的には共有財産となると考えてください。

  1. 不動産
  2. 車・バイク等
  3. 預貯金
  4. 家具・家電
  5. 退職金
  6. 保険の解約返戻金
  7. 借金(生活のために借り入れたお金)

共有財産には、ⅰ~ⅵのような積極財産だけでなく、ⅶのような消極財産も含まれます。生活のために借り入れたお金は共有財産となりますので、たとえば、マイホームや自動車を購入するために組んだローンの残債や、子どもの教育ローンの残債などがこれに当たります。

共有財産は、財産分与の対象となるため、離婚の際に夫婦で公平に分け合うことになります。

(2) 特有財産

特有財産とは、夫婦の一方が①婚姻前から所有している財産②婚姻中自己の名で得た財産のことをいいます。

これらは、夫婦の協力により築き上げた財産とはいえませんので、財産分与の対象とはなりません

特有財産となる代表的なものは以下のような財産です。

  1. 婚姻前に貯めていた預貯金
  2. 嫁入り道具として妻が持ち込んだ財産
  3. それぞれの家族から相続した財産
  4. 婚姻前から負担していた借金
  5. 婚姻後に個人的な理由で負った借金

ⅳとⅴにあるように、結婚前から負担していた借金や、婚姻中にギャンブルや趣味などの自己都合で負担した借金は特有財産となるため、財産分与の対象とはなりません。

2.財産分与の方法

共有財産については、離婚時に財産分与で公平に分け合うというお話しをしました。特段の事情がない限り、夫婦の財産形成に関する貢献度は同じと考えられますから、財産分与の割合は1:1となるのが原則です。

分け合う財産が積極財産しかない場合の計算は単純ですが、では、借金という消極財産がある場合の計算はどうなるでしょうか。

たとえば、夫婦の共有財産が、合計300万円の預貯金と夫名義の借金100万円だったと仮定します。この場合の、財産分与は原則として次のようなものとなります。

300万円(預貯金)-100万円(生活のための借金)=200万円(分与の対象となるプラスの資産)

200万円÷2(夫婦で折半)=100万円(一人あたりの分与の金額)

この事例の場合、夫は100万円の借金を今後返済していく必要がありますので、実際には300万円の預貯金を夫に200万円、妻に100万円分割することで実質的にそれぞれ100万円の分与を受けられる形になります。

上記事例は、積極財産が預貯金のみという単純な事例ですが、マイホームなどの不動産がある場合には、その価値をどう評価するか、不動産を売却するのかどちらか一方が住み続けるのか、その場合の金銭的処理はどうするのかなど、複雑な問題が絡み合ってきます。いずれにしても、後々トラブルとならないためにも、離婚時に明確に条件を合意しておくことが必要です。

3.離婚成立後に相手方が借金を支払えなくなった場合の問題と対策

冒頭で述べたとおり、相手方名義の借金について、夫婦のもう一方が離婚後に返済義務を負うことは基本的にはありません。

ただし、例外的に、元配偶者の借金について返済義務を負ってしまうことがあるので、注意が必要です。

(1) 連帯保証人になっている場合

夫婦の一方が借金の名義人であり、もう一方がその借金の連帯保証人になっていた場合、名義人が離婚後の経済状況により返済を遅滞したりすると、連帯保証人は債権者からその返済を求められます。

これは、上記2の事例のように、この借金の存在について考慮した財産分与を夫婦間で行っていたとしても異なることはありません。婚姻関係を解消したとしても、債権者との関係では連帯保証人であることに変わりはなく、その立場での返済義務が残っているからです。

そのため、相手方の借金の連帯保証人になっていて、かつ、相手方の資力に不安がある場合には、離婚時に、新しい連帯保証人を探して差替えを行うなどの対策を採っておく必要があります。

(2) 相手方が死亡したとき

離婚後に、相手方が借金を全額返済しないまま死亡した場合、元夫婦のもう一方に残債の請求がくることはありません。夫婦関係は離婚によって解消されており、相続人の立場にはないためです。

ただし、子については、親子関係が離婚によって解消されることはないため、法定相続人として残債を請求されることがあるので注意が必要です。

この場合は、相続放棄の手続を採ることで返済義務から免れることが可能です。相続放棄は、相続開始を知ってから3か月以内に家庭裁判所に申述して行う必要があります。

4.最後に

婚姻中にできた借金は、名義人でなければ返済義務自体はありません。ただし、共有財産に該当する借金については、財産分与において清算の対象になりますので、借金の金額が財産分与として受け取れる金額に影響を及ぼします。

借金の有無にかかわらず、財産分与に関しては、財産の評価の仕方、分割の方法など、多分に複雑で専門的な判断が必要となります。

夫婦間での協議に困難や不安を感じている場合には、ぜひ一度専門の弁護士に相談されることをお勧めします。

当事務所では、初回法律相談は60分まで無料で承っております。お悩みの方は一度お気軽にお問い合わせください。