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自筆証書遺言のルールに関する改正について

2020年03月26日 | コラム, 遺言・相続

自筆証書遺言とは?

自筆証書遺言とはその名のとおり、遺言者が自筆で書き上げる遺言書のことです。

テレビの再現VTRなどで「親父の遺言が出てきた!」と叫びながら「遺言」と筆書きされた封書をかざすというシーンを皆様も目にしたことがあるでしょうから、一般の方が「遺言書」といってまず思い浮かべるのはこの「自筆証書遺言」になるのではないでしょうか。

自筆証書遺言は、自らの手で、特段の費用もかけずに作成できるのが利点ですが、民法において、その方式が厳格に定められています。具体的には、次の4つのルールが定められており、このどれか一つを欠くだけで、その遺言書は無効となってしまいます。  

1 全文の自署

2 日付の記載

3 氏名

4 押印

自署ルールの改正

特に、一番注意しなければいけないのが、「全文の自署」という点です。パソコンで文書を作成することが当たり前になっている現代ですが、自筆証書遺言に関しては、最初から最後まで徹底して手書きで作成しなければならないのです。

ただ、この点に関しては、平成31年施行の改正法によって、一部緩和がなされました。

具体的には、自筆証書遺言に財産目録を添付する場合、その財産目録に関しては、自署でなくでも構わないことになりました。

「財産目録」とは、相続させたり遺贈させたりする財産が複数あるなどして複雑な場合に、その財産群を遺言書本文とは別に記載した書面のことをいいます。通常は、「○○を太郎に相続させる」などと記載すれば足りるのですが、財産が多数ある場合には、「別紙財産目録1、2、3記載の財産を太郎に相続させる」などとして、財産の表記を別立てにするのです。

財産目録は、相続財産が多数あるときに遺言書本文とは別立てで作成するものですので、これが自署でなくてもよくなったことは、明らかに作成の負担の軽減につながるでしょう。

自署でなくてもいいということは、「ワープロ打ち」に限らず、「他人に手書きで書いてもらう」「登記簿謄本や預金通帳のコピーを添付する」といった方法も可能です。

注意点

もっとも、この改正に伴って、新たに注意しなければいけない点があるのも事実です。

1 財産目録への署名・押印

まず、遺言者は、遺言書本文だけでなく、財産目録についても署名・押印をしなければなりません。財産目録が複数枚になる場合には、そのすべてに署名・押印が必要になりますので、注意が必要です。

2 財産目録「添付」の場合にのみ使えるルールであること

自署でなくてもいいのは、あくまでも財産目録を「添付する」場合のみです。つまり、財産目録は、遺言書本文とは別の紙に記載されている必要があります。

例えば、財産目録を遺言書本文とは別立てで作成する場合でも、遺言書本文と同一の紙に書かれている場合には、原則どおり自署でなくてはなりません。

3 財産目録に訂正を加える場合

一度作成した財産目録に誤りがあったなどして訂正を加える場合、より一層注意が必要です。

一般的には、文書の内容を訂正する場合、訂正箇所に二重線を引き、そこに修正後の字句を加え、押印することで足りることが多いと思います。

しかしながら、遺言書の場合は、これでは訂正として不十分です。上記に加え、さらに、余白部分に「第○行中、○字削除○字追加」と記載し、「署名」する必要があります。率直に言ってかなりの手間がかかります。

なお、訂正に関するこのルールは、財産目録に限った話ではなく、遺言書本文(自署部分)に訂正を加える場合も同様です。

したがって、遺言書の訂正に関しては、下手に修正を加えますとせっかく作成した遺言書が形式不備により無効になってしまうという危険性が少なくありませんので、訂正が必要な場合は、面倒でも一から遺言書を作成し直すことをお薦めしています。

まとめ

以上のとおり、自筆証書遺言の自署ルールは一部緩和されたものの、自署でなくてもいい範囲は限られ、また、新たな注意点も生じていることから、自筆証書遺言が依然として無効になりやすい方式であることに変わりありません。

したがって、当事務所としては、遺言書を作成する際は、方式不備により無効になる危険性が格段に低い公正証書遺言をできるだけ利用されるようお薦めしています。

仮に、自筆証書遺言の作成によらなければならない理由がある場合でも、ご自身の判断で作成することには危険性を伴いますので、事前に弁護士に相談の上、形式の不備がないことを確認してもらうのが望ましいでしょう。