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遺留分侵害額請求に関する注意点

2020年05月13日 | コラム, 遺言・相続

1.期間制限

遺留分侵害額の請求はいつまでもできるわけではなく、消滅時効除斥期間による期間制限があります。

消滅時効と除斥期間のいずれも、一定の期間が経過すると遺留分侵害額請求ができなくなる制度という点では同一です。

違いは、消滅時効の場合には途中でその進行を止めることができるのに対し、除斥期間の場合は止めることが不可能という点です。

消滅時効

遺留分侵害額請求権は、「相続の開始と遺留分を侵害する贈与または遺贈があったことを知ったときから1年」の間に行使しないと時効によって消滅してしまいます。

単に相続が発生しただけでなく、そのこと(=被相続人が亡くなったこと)を知り、かつ、遺留分が侵害されていること(例えば、残されていた遺言において遺留分を侵害する内容の遺贈がなされていること)を知った時点から時効期間は進行することになります。

とはいえ、1年間というかなりの短期間です。遺留分が侵害されているかどうかの判断には、遺産の全体像の把握はもちろんのこと、個別の財産の価額評価も必要ですから、それほどの時間的猶予はありません

遺留分侵害額請求の具体的方法は2項で述べますが、1年以内に遺留分侵害額請求をすれば権利は保全され、実際に遺留分を取り戻すのに1年以上かかったとしても問題ありません(ただし、請求から5年を経過すると一般的な消滅時効にかかると考えられていますので、この点は注意が必要です)。

除斥期間

遺留分侵害額請求の期間制限には、上記の消滅時効のほかに、「相続開始の時から10年」という除斥期間が定められています。

これについては、相続人が相続開始や遺留分侵害の事実を知っていたかどうかは関係ありません。被相続人が亡くなってから10年を経過すると当然に遺留分侵害額請求権が消滅してしまいます。

除斥期間がその進行を止められないのは上記のとおりですので、例えば仮に訴訟を提起して請求しても、訴訟中に10年が経過した場合には請求が棄却されることになります。

2.遺留分侵害額請求の方法

では、遺留分を侵害している人(受遺者など)に対し、具体的にどのような方法で遺留分侵害額の請求を行えばいいのでしょうか?

内容証明郵便での通知

遺留分侵害額の請求は、相続開始と遺言や贈与の事実を知ってから1年以内に行わなければならないのはすでに述べたとおりです。

しかしながら、例えば口頭で請求を行った場合、証拠が残らず、1年経過後に相手方から消滅時効を主張されるおそれがあります。

このようなことがないよう、遺留分侵害額を請求するときは、送付した文書の内容と日付が記録として残るよう必ず内容証明郵便の方法によることが必要です。この際、さらに配達証明も付けることで、相手方が受領した日付も記録化しておくことが重要です。

相手方との協議

内容証明郵便での請求書を送付したとしても、直ちに相手方から遺留分侵害額の支払いを得られることはほとんどありません。

遺産の評価の仕方によって遺留分の金額に争いが生じることも多いですし、また、遺留分侵害額が多額の場合には相手方が一括での支払いが困難な場合もあります(特に、遺産の大半が不動産場合など)。

そこで、遺留分侵害額の請求後、相手方と金額や支払方法について協議を行うのが一般的です。

合意が整った場合には、合意書を作成することになりますが、分割払いの場合には公正証書の形にすることをお勧めします。公正証書にすれば、相手方が分割の支払いを怠った場合、訴訟を経ることなく、直ちに資産を差し押さえることが可能となるためです。

遺留分侵害額調停

残念ながら当事者間での協議がまとまらない場合、あるいは、相手方が全く協議に応じないような場合には、家庭裁判所に遺留分侵害額の調停を申し立てることになります。

家事調停においては、2名の調停委員が間に入って話し合いを調整してくれますので、当事者のみで協議するより話し合いは進めやすくなります。

訴訟提起

家事調停においても相手方が遺留分の支払に応じない場合や金額に合意できない場合、調停は不成立で終了となります。

この場合にはもはや話し合いによる解決は困難ですので、遺留分侵害額請求の訴訟を地方裁判所または簡易裁判所に提起するほかありません。

訴訟においては、遺留分の存在と金額を根拠づける証拠を適宜提出し、判決による判断を仰ぐことになります。事案によっては、訴訟においても、和解という形で話し合いによる解決が採られるケースもあります。

3.まとめ

以上、遺留分侵害額の請求において注意すべき点と請求の方法について説明いたしました。

特に、期間制限に関しては1年という短期の消滅時効が定められており、遺留分侵害の有無やその金額を精査する時間を考えると、時間的猶予はほとんどないとお考えいただいた方が無難です。

遺留分侵害を思い当たる端緒としては遺言書の内容を把握してというパターンが最も多いと思いますが、直ちに遺留分を侵害されているとの確証を得られないケースも多々あります。その場合でも、制限期間は日々進行していますので、疑わしい点がありましたら、すぐに専門家である弁護士に相談されることをお勧めします。

なお、この記事で解説した遺留分侵害額の請求に関する手続に関しては、令和元年7月1日に施行された改正相続法を前提としています。

同日前に発生した相続に関しては改正前の相続法が適用され、一部上記説明とは異なる部分がありますので、この点も踏まえ、専門家への相談をご検討ください。