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遺言書保管制度とは?

2021年03月31日 | コラム, 遺言・相続

1.はじめに

令和2年7月10日から、自筆証書遺言の保管制度が開始されています。

今回は、この制度の概要を説明した上で、今後遺言書の作成を考えられている方がこの方式によるべきか、または公正証書遺言等その他の方式によるべきか、判断の指針をお示ししたいと思います。

2.遺言書保管制度が制定された経緯

従前、自筆証書遺言については公的機関による保管サービスがなく(自筆証書遺言の詳細はこちらをご覧下さい)、作成後は遺言者本人が保管する必要がありました。

そのため、自筆証書遺言には、特別の費用がかからずにいつでもどこでも作成できるという手軽さがあった反面、遺言者が自ら保管し続けなければならず、遺言者死亡後にその存在を知らせる制度もなかったことから、①遺言書の紛失、②他人による破棄・隠匿・改ざん、③相続人等がその存在に気付かないまま遺産分割を進めてしまう、などの種々のリスクがありました。

上記のリスクを軽減し、相続をめぐる紛争を防止するという観点から新たに設けられたのが自筆証書遺言の保管制度になります。

3.制度の概要

(1) 遺言書保管所

遺言書の保管を行う公的機関については、全国一律にサービスを提供する必要があること、プライバシーの確保が必要であることなどから、法務局とされています。

もっとも、すべての法務局(本局、支局、出張所)が遺言書保管事務を行っているわけではなく、一部の指定された法務局のみとなりますので注意が必要です(詳細は法務省のホームページでご確認下さい)。

(2) 保管対象となる遺言の方式

保管の対象となる遺言書は、民法968条の方式に則って作成された自筆証書遺言になります。

公正証書遺言や秘密証書遺言が保管の対象にならないだけでなく、明らかに民法968条に定める方式(全文が自署であること、押印がされていること等)を欠いた自筆証書遺言も保管の対象とはなりません。

そのため、方式を満たしているかの確認のために、自筆証書遺言は無封であることも必要となり、封筒等に入れられて封印されている遺言書については保管時までに開封する必要があります。

(3) 保管申請の手続

保管申請に際しては、遺言書保管所である法務局への出頭が必要です。

遺言書保管所に指定されている法務局であれば全国どこでもいいというわけではなく、①遺言者の住所地、②遺言者の本籍地、③遺言者所有の不動産の所在地のいずれかを管轄する遺言書保管所でなければなりません。

また、申請は遺言者本人が出頭しなければならず、代理人による申請も認められていないため、外出が困難な方は、事実上この制度は利用できないことになります。

申請が受け付けられると、遺言書そのものが法務局で保管されるほか、遺言書の画像情報や保管開始年月日等がデータでも記録管理されます。

(4) 保管申請手続後の閲覧や撤回

遺言者は、保管申請手続後いつでも、保管中の遺言を閲覧したり、撤回して返還を受けたりすることができます。相続発生前にこれらのことができるのは遺言者だけですので、生前、遺言書の存在やその内容が関係相続人等に明らかになることはありません。

注意すべき点としては、申請時と同様、閲覧も撤回も遺言者本人が出頭して行わなければならないとされている点です。

したがって、保管申請手続後に外出困難な状態に至った場合は、事実上閲覧や撤回は不可能ということになります。このようなケースで保管中の遺言を撤回したい場合には、通常の自筆証書遺言や公正証書遺言を新たに作成することによって行うほかありません。

(5) 相続開始後の手続

相続発生後(遺言者死亡後)、関係相続人等は、遺言書を閲覧することや遺言書の画像情報等が記録された遺言書情報証明書の交付を受けることが可能となります。

関係相続人のいずれかがこれらの手続を採ると、法務局から相続人や受遺者に対して遺言書を保管している旨の通知がなされることになっていますので、一部の相続人のみ遺言書の存在を関知できないなどの不公平が生じることはありません。

(6) 検認の適用除外

通常の自筆証書遺言において要求されている検認ですが、遺言書保管所に保管されている遺言書については不要とされています。

検認の目的は、相続人等に対し遺言の存在を通知するとともに、遺言書の形状や内容等を明確にして後日の偽造・変造・隠匿・滅失等を防止することにありますが、遺言書保管所に保管されている遺言書についてはすでにその目的は達せられているためです。

4.本制度のメリット・デメリット

以上、本制度の内容を概観した上でのメリットとデメリットですが、それぞれ大きく次のようなものになるかと思います。

メリット

  • 公的機関で保管されるため、遺言者が遺言書を紛失したり、遺言内容が生前に相続人等に知られ、遺言書を破棄・隠匿・改ざんされたりするリスクを避けることができる
  • 方式の不備によって、遺言が無効となることを避けることができる(ただし、100%要式を備えていることが保証されるわけではないことは注意が必要です)
  • (公正証書遺言と比較して)費用が低額で、証人を準備する必要もない

デメリット

  • 申請時、閲覧時、撤回時のいずれにおいても、遺言者自ら保管所に出頭しなければならない
  • (公正証書遺言と比較して)保管所は遺言書の作成には一切関与しないため、遺言者の意向を反映した内容の遺言書となっているかは全く担保されない
  • 遺言者死亡後、相続人等が、遺言書の保管の有無の照会をしなければ、遺言書の存在が知られないまま相続手続が行われる可能性は残る
  • 遺言者死亡後、保管所管理の遺言書が発見された場合でも、自筆証書遺言や公正証書遺言が別に存在する場合がある(すべてを調査した上で、有効な遺言書がどれであるか判断する必要がある)

5.最後に

以上、簡単ではありますが、自筆証書遺言を法務局で保管する遺言書保管制度について説明しました。

自筆証書遺言を作成したもののご自身での保管に不安がある方にとっては、利用を検討する価値のある制度です。

ただ、法務局が確認するのは方式の不備がないかという形式的な点に留まりますので、保管申請を行う前に、ご自身の意向に沿った遺言書となっているかは専門家の判断を仰ぐことをお勧めします。

専門の弁護士であれば、それだけでなく、そもそも遺言書保管制度を利用すべきか、それとも公正証書遺言によるべきか、双方のメリット・デメリットを考慮した上で、最適な方法をご提案することが可能です。

当事務所は初回相談60分まで無料で承っておりますので、遺言書作成を検討されている方は是非一度お気軽にお問い合わせ下さい。